先日の「サハラ砂漠の王子様」に引き続き、さっそくその続編となるこちらの「モロッコで断食」を読みました。
今回の本も相変わらず、テンポのいい文章で読みやすかった!おもしろい!!
1作目の「サハラ砂漠の王子様」が"モロッコでの出来事"をメインとして、実際に筆者の周りに起こったことが主観的に描かれているのに対して、
2作目の「モロッコで断食」では、"イスラム圏の文化や思想"をメインとして、現地の人々の暮らしが客観的に描かれています。
個人的には今回の2作目の方が、彼らの思想がわかって興味深かったです。
モロッコで断食
著者は、前作と同じくエッセイストのたかのてるこさん。(前回のブログでこのことには少し触れたので、今回は割愛!)
1993年、たかのさんが22歳の時、大学の卒業一人旅のことをつづったエッセイ。
フランス→スペイン→モロッコと旅しており、前回の作品では、最初の2国とモロッコでのさわりの様子が書かかれてました。
今回の旅の続きでは、前回旅した砂漠から一旦マラケシュという町に戻り、再度仕切り直し。
たまたまその時、年に1度の断食(ラマダーン)の時期にあたり、そんな中であったベルベル人男性と仲良くなって、イスラムの文化を教えてもらったり、彼の実家に行ったりしているうちに、心を通わせる...
というお話。本は前半・後半と場面は大きく異なりますが、“カリッド”という名のベルベル人男性が出てきて、とにかく彼が1冊通してのキーマン。
前半:イスラム教と慣習のいろいろ
「断食をする理由」から始まり、一夫多妻制の起源とか、禁酒とか、女性のヒジャブの理由とか、現地の人の口から聞かないとわからないような、イスラム教トリビアがたくさんでてきます。純粋に、興味深いです。
しかも、小難しい文章ではなくって、このカリッドという青年のセリフを通して教えてくれるもんだから、すごく分かりやすく心に入ってきます。
よく考えたら、9.11テロとか、イスラム国問題とか、全部この旅の後に出てきた問題なんですね。それ以前に著者は優しいムスリムにたくさん会っていたのに、その後に悲しい事件がたくさん起こってしまって、なんか残念。
後編:ベルベルの家族と愛のはなし
後半は、アトラスの山間にあるカリッドの実家に訪問し、そこでのカスバの暮らしやベルベル民族の家族愛について描かれています。
とくにその更に後半、カリッドとの間に特別な感情が芽生えてしまって読んでいるこちらが恥ずかしくなってしまうくらい愛情描写のオンパレードでした。
それにしても、著者、前作でスペイン人の男性と砂漠で恋に落ちてなかったか??
その時もかなりの熱い思いをを綴ってなかったか??
そして、それは時系列にしてものの数週間前とかでないか??
著者があまりに短期間でコロコロ恋のベクトルが変わっているのでちょっと驚く部分もあるのですが(しかも日本に彼氏がいる)、ご本人も本の中で、「スペイン人男性に対しては恋、カリッドに対しては愛」と書かれているので、きっとまた別の場所にある思い出なんだと思う。
感想:モロッコ人=イスラム教=優しい??
前編ありきの後編、逆も然りなので、1冊通してこそのストーリーだとはわかっているのですが、どうしても前後で切り分けて考えてしまいます。
前編は、モロッコ人のやさしさとゆるさの正体が少しわかったというか、イスラム世界に生きる人たちのリアルが、現地人を通すことで穏やかに映ったというか。
後半は、ひたすら懐かしさと自分がモロッコに行った時の回想。
「あー、あの時見えてたカスバではこんな生活が営まれてるんやー」「裕福な住まいではなさそうだったけど、きっと丁寧に生きてるんだろうなー」という。
全体を通してムスリムの優しさや家族愛などが描かれていて、所々にジーンときます。
そういえば、大学の時に文化人類学だったか宗教学だったか、何かの授業を受けたときに、「イスラム教は優しい宗教なんです...」って教授がしみじみ言っていたことを思い出しました。
難しいですね、宗教が絡んでくると。
イスラム教関連の過激な事件も起こっているから、いい印象も悪い印象も、根拠なくどっちかに偏った意見を持つべきではないんだろうけど、たかのさんがムスリムによくしてもらったことは事実に変わりはないし、私も実際に、現地で優しくて記憶に残る人たちにたくさん会った。
その人自身がその宗教を軸に生きているということをただの結果論として捉えて、それを通り越して人として尊重したり、人としていい関係を築けたらもうそれが真実なんじゃないか?
でもその宗教だったからこそそういう人格になったという、理由になりうる考えもできるのか。。こればかりは考えてもきりのない問題。
とにかく全編を通して本当に心優しい人が多く、たかのさんが出会った現地の人然り、私が出会った現地の人然り、どうかいつまでも平和で元気であってほしいと、思う今日この頃です。