
最近いくつか映画を見たのですが、その中で印象的だったものが2本あります。
どちらも学生時代の残像をぼんやり思い出させるものであり、見終わってしばらく経った今も当時の風景がふと頭によぎる...という状況が続く毎日。
心地いいような懐かしいような。映画の余韻がなかなか消えてくれないので、とりあえず文章にして昇華させたいと思う。
尚、直近で公開されている「秒速5センチメートル」に関することは後半で書いてます。必要に応じてスクロールしてご覧くださいなぁ!
今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は
ジャルジャルの福徳さんが出身の大学を舞台に書いた小説を映画化した群像劇。
こちらの映画、実は私の母校がロケ地となっている(つまり福徳さんは先輩である)ので見たいと思っていたものの、公開時がちょうど臨月と重なっていたのでみれなかったもの。最近アマプラで配信されていたので、息子が寝た隙に満を持して視聴。
元々「見たい」の一番の原動力が母校であることに他ならなかったので、(あと今をときめく河合優実ちゃんが出ていること)ストーリー的にはほうほうそんな感じか。で終わってしまったのだけれど、やはり何と言っても刺さったのは母校の風景よ。
在学中は新学舎だの生協だの、一生どこかしらの工事をしている学校だったので初見の風景はちょいちょいあったけれど、それでも基本的な建物や構造は変わらず「あぁ、あそこだ!」の連続。まるであの頃に戻ったように映画を通してバーチャル母校巡りを楽しめました。
その気分を一気に高めてくれたのが、映画内に出てくるワンコの存在。
大学近くのカフェの看板犬という設定なのだけれど、そのカフェも、犬種も、名前も、私がいた当時と同じ設定だったのですよ。心なしかワンちゃんの風貌も寄せているような。
福徳さんはいくつか年上とはいえほぼ同年代なので、きっと見ていた景色は似たようなものだったのかなぁ。
ストーリーの割と冒頭にこのワンコが登場したおかげで、2000年代の大学周辺に照らし合わせて没入できた気分だったよ。もちろん実際は随分と変わっているのだろうけれど。
内容でいうと、さっちゃん役を演じる伊東蒼ちゃんがすごくすごくよかった!
特に主人公に告白する長セリフのシーンは圧巻。
余談だけど、自身が関西出身だからか、映画やドラマの関西弁がまたにすごく気になってしまうのよね。実際あるんですよ、字面では決して表せない関西弁特有の絶っっ妙なイントネーションとか、間とか、息づかいとか。
でも伊東蒼ちゃんは地元が大阪だけあって完璧。セリフというより本当に会話しているみたい。てわたしが言うのもおこがましいが。
他の役者さんもさることながら個人的MVPは間違いなく彼女で、告白シーンのためだけにもう一度見たいなぁと思える映画でした。
秒速5センチメートル
言わずと知れた新海誠監督のアニメが実写化されたもの。
実写化されるとわかってから、さらにはティーザーを見て主演の松村北斗君の醸す雰囲気が完璧にアニメの遠野貴樹であったことから、絶対に劇場でみたいと思っていた映画!
彼、すごいな。主人公の陰鬱さ、影がありながらもどことなく品性を感じさせられる感じ...予告を見てそのハマり具合にびっくりしました。
実はこのアニメ、私の中でかなり鬱映画認定されている。見たのは当の昔だけど、グッと心に刻まれた映画なので少し思い出語りをさせてください。
初めて見たのはたしか大学3回生か4回生の頃。当時の私は某レンタルショップでアルバイトしており、やたらと借りられるアニメだなーと気になり従業員特典でDVDをタダで借りて帰って、そのままバイト終わりの深夜に視聴しました。
その時私はかなり依存癖の強い、今でいうモラハラとメンヘラを兼ね備えたような彼氏がいて、ずっと別れたいと思っていた。のだけど、いざ別れ話をしたとて部屋だと逆ギレされて軟禁、電話だと「ごめぇぇえん悪いとこなおすからぁぁぁぁ」と号泣した状態で家まで押しかけられ、どちらにしても別れさせてもらえず惰性で付き合うという最悪の日々を送ってました。
いや怖すぎるやろ。(ちなみに当時の未熟だった私には外で話すという選択肢がなかった)
こんな感じで、とにかく恋愛面で依存や束縛をされることが完全にトラウマだったんです。
そんな時に見たこちらのアニメ。概要は主人公・遠野貴樹が小学生の頃の初恋の相手を会えなくなっても引きずり続ける内容なのですが、見終わってから軽く鬱気分にさせられました。「男(主語がでかいが)って1人の女にこんなにも執着するもんなん?私一生追ってこられるんか...」と。
今思えばそれが理由というよりも、作品の切ない世界観にまんまとハマっただけだと思いますが、後味が悪すぎてその後1ヶ月くらいずっと気分が落ちていたことを覚えています。
そのくせ、新海監督が描く風景のリアルさや美しさに魅せられ、23歳か24歳の頃には実際に東京の参宮橋まで聖地巡礼に行ったという、よくも悪くも矛盾的な、それだけ何年経っても印象に残っている映画なのでした。
...はい、閑話休題。
そんな思い入れ(?)のあった映画、映画館で視聴して冒頭、東京・種子島・栃木の風景カットが挿入された瞬間からグッと引き込まれました。あぁ、アニメの世界観と同じだ。おまけにTSUTAYA店内のシーンとまさかのBUMPが挿入歌として流れ、序盤からかなりエモーショナルな気持ちに。これは完全に私を堕としにかかっている。
というか若かりし頃にアニメ版を見たアラフォー世代は何かしら刺さると思います。
東京のビル群、夜景、電線、種子島の畑、一本道とバイク、自転車置き場、商店、岩船の駅の待合室、つり革、電車の連結部分。アニメの美しいシーンを淡いフィルターを通して、これぞのさじ加減で再現してくれた奥山監督に最大級のお礼を言いたい。
演者でいうと、上田悠斗くん・青木柚くん・松村北斗くんの世代間リレーが素晴らしかった。それぞれ違う年代を演じてもちゃんと最終的に松村くんに繋がる「遠野貴樹」なんですよ。そしてその松村くんは別格。その佇まい全てが完全に遠野くんで、本当に原作をリスペクトして演じてくれたんだなというのが伝わる。声も良い。ラストの踏切のシーン、向こうを見る後姿の角度や動きが完全にアニメと一緒で感動したよ。
あとは個人的に好きな森七菜ちゃんが澄田花苗役を演じていて嬉しい。秒速5センチメートルのエピソードの中ではコスモナウトが1番好きです。こんなにも純粋で可愛いいい子が慕ってくれているのに、気づかないことにして残酷な距離感を保っている遠野はアホだ。と何度思ったことか。
鑑賞の数日後に家族で遠出する用事があった際、またまた立ち寄ったSAで花苗ちゃんのキーアイテム・ヨーグルッペを発見。買ってしまった。
長くなりましたが結論、素晴らしかったです。(以下ネタバレ注意)
ラスト、あれほど人との関わりを避けて雑談を毛嫌いしていた遠野くんが、科学館の館長に今の心境を吐露でき、直近の別れた恋人に好きだったところを伝えられ、少しだけ前に進める描写があり救われた。好き嫌いで賛否分かれると思うけど、秒速5センチメートルは実写版を見て初めて完結する気がする。わたし自身も長年この作品に抱いていた心のしこりがようやく取れたよ。
そして何度も言うが、松村北斗素晴らしい。
今までアイドルのイメージが強かったけど、彼が出ている作品なら見たいと思うようになった。遠野貴樹を演じてくれてありがとう。
おわりに
奇しくも短期間に学生時代を彷彿させる映画を見たおかげで、なんとなく懐かしい気持ちになってる今日この頃です。育休中でほぼ家にいるから余計かなー。
年月が経つごとにどんどんぼんやりしていく学生時代の記憶が、「今日の空が〜」を見ることで再び輪郭がはっきりし、実写の「秒速〜」で無事モヤモヤが昇華される。たまたまだけどいいタイミングで、いい流れで見れてよかったなー。
「秒速〜」の方はもう一度映画館で鑑賞したいと思いつつ、なんとかこなしている最近の日々のことを考えると現実的ではない。
早くサブスクで解禁されるといいな!
※ちなみにモラハラ元カレのその後はというと、就職で遠距離になり物理的に離れると執着がなくなったのか、卒業後ほどなくしてすんなり別れられた。ほんまによかった...