世界の、特にアフリカの少数部族を被写体としているフォトグラファ、ヨシダナギさんのアフリカ渡航エッセイ。
先日、ヨシダナギ展に行った時の写真があまりにキレイで、グッズ売り場にこの本が置いてあったのが忘れられず、後で読んでみました。
モロッコに旅行に行って以来、アフリカンカルチャーやアフリカ人のパーソナライズな部分にに大いに興味のある私。
ヨシダさんってどんな人?モロッコ以外のアフリカってどんな感じ?
そんな疑問が解消を通り越して、さらにアフリカへの好奇心が掻き立てられて読み終えました。
海外旅行やアフリカに興味のある方、タッチも軽くサクッと読めるので、ぜひおすすめです。
ヨシダナギ、裸でアフリカをゆく
著者のヨシダナギさんとこの本の概要をざっくり説明すると、こんな感じです。
著者:クレイジージャーニーでお馴染みのあの方...
ヨシダナギ、1986年生まれのフォトグラファ。
小さいころからマサイ族に憧れ、大きくなったら自分も彼らのようになれると思いこむ。後になれないと知って絶望。
2009年から独学でカメラを始める。
同時にアフリカへの憧れを捨てきれず、23歳の時に初めてこの地に旅行。
何度かの渡航を重ねる中、裸になって(現地の人と同じ格好になって)仲良くなる、という方法を覚え、世にもアーティスティックな部族のいで立ちをシャッターに収めている。
何年か前に、クレイジージャーニーでも放映されていたので、知っている方も多いのでは。のーんびりしつつどこか陰のある、ミステリアスな女性です。
本の内容:本格活動以前の著者のアフリカ旅行記
ヨシダさんが初めてアフリカに行った2009年から、2014年までの現地での出来事が、エッセイ形式でつづられています。
登場する国は、下記の11か国。
エチオピア、マリ、ブルキナファソ、ジブチ、スーダン、ウガンダ、ガーナ、カメルーン、チャド、ナミビア、タンザニア
ガイドとのゴタゴタ、現地でのオモロイ出来事、現地でのマジメな出来事が、3:6:1くらいの構成で綴ってあります。笑
もともと当時のヨシダさんのブログを本向けに書き直したものなので、堅苦しい感じはなく、軽いタッチで一気に笑って読めるような内容です。
感想① いろいろあるけどアフリカ人ってやっぱり奥深い
本の具体的な内容はというと、
・ホテルのエアコンからイグアナが飛び出てきた
・ミートソースパスタ頼んだら材料切らしてて素のパスタが出てきた
・口に豆を含んで飛ばすゲームを教えてもらったらオリックスのウ〇コだった
みたいな、そういうアホなことを期待通り面白おかしく書いてくれていて、あっという間に読めました。多分活字が苦手な人でも一瞬で読めると思います。
そんな中にもきっちりアフリカの情勢と現地の人の生き方、リアルな彼らとの向き合い方みたいなものをきっちり組み込んでくれているから、ただのアフリカ珍道旅行記になっていなかったところがすっごくよかったです。
私も先にモロッコ人と接していたので、出てくる人を同じアフリカ人というくくりで考えたら、いろいろ共通するところがあって納得。
・基本は金くれスタンス
・東洋人はちょろまかされる
みたいなマイナスな部分ももちろんあるけど、
・お金がなくても心豊かに過ごしている
・初めて会ったのに献身的に世話を焼いてくれる人も多い
・明るくゆるく、自分たちにできる暮らしを営んでいる
ということが節々にみられて、この大陸で生きてきた人たちの、強さとか、ゆるさ、優しさみたいなものを改めて感じることができました。
感想② ヨシダさんの好きを突き詰めた根性がうらやましい
ヨシダさんのことはこの本を読むまでは、アフリカ行って一発あてた、独特の感性をもったフォトグラファ、としか思ってませんでした。
ですが実際、彼女は最初は個人旅行としてアフリカに行っており、やっと今の撮影スタイルになったのは初訪問から3年後。
カメラを持って行ってたものの当初からフォトグラファを名乗っていたわけでもなく、意外とすんなりいっていなかったことが分かります。
その間ずっと「好き」という思いだけでアフリカに通い続けていたことと、結構、下積みというか、準備期間が長く地道にやってこられたんだなぁと、人間の一種の可能性のようなものが感じられて、何となく元気が出ました。(もちろん彼女の場合は運もあるのでしょうが)
「裸になった」ということだけがフィーチャーされがちですが、その行動の軸には「相手の文化を受け入れる」というのがあって、それを言われずともわかっていたヨシダさんは、やっぱり天性のアフリカへの使者ですね(笑)
ヨシダさんのアフリカ愛が伝わりますように
とりあえず、アフリカおもしろい!やっぱ興味深い!
差別、貧困、発展途上、軽い生死感...
もちろんそれを無視して話を進めちゃいけないんだろうけど、結果として印象に残ったのはその中で生きる人のたくましさと優しさでした。
全体的に軽いタッチで、ほとんどが面白エピソードなのですが、そんな中で隠れがちな彼女の主張の中から少し抜粋。。
「アフリカに行ってくるって言ったら、みんなに危なくないの?って言われる。その人はアフリカに行ったことがないのに何で危ないって言えるの?アフリカの1部で起こっていることを、“アフリカ国”のものとして見ないで。彼らはお金や名誉でなはい、お金で買えないと富を持っている。“アフリカ=危険”という偏見を持っている日本人が減り、ひとりでも多くの日本人がアフリカに興味を持ってくれることを願ってます」
わたしもモロッコ行く前、大体の人に、「危なくない?」「治安大丈夫?」「なんでわざわざそこに?」って言われて、「なにを根拠に言ってるんだろ」って思いながら、結果ありがたいことにすごく人間味あふれる人たちに出会って帰ってきたから、この内容には激しく同意。
アフリカという場所に少しでもいい印象を持っているものとしては、とても共感できる本でした!
ただし、良くも悪くも全体的に口語体で、文芸的な要素は少ないので、研究書のような内容を期待している、読みごたえがほしい、真面目な本が読みたい、という人にはおすすめしません...
これからアフリカに行く人、本でショートトリップをしたい人、異文化に興味がある人、ヨシダナギさんが好きな人、ぜひ読んでみてくださいなぁー!